整備技術情報

尿素SCRシステムとは?仕組みと異常時の対処法、触媒の役割について

尿素SCRシステムの仕組みや役割、触媒の種類、異常時の対処方法を詳しく解説。環境規制への対応やメンテナンスのポイントを押さえ、ディーゼル車の性能を最適化しましょう。ディーゼル車にはなくてはならない存在の尿素SCRシステムを分かりやすく解説。


 

今回は尿素SCRシステムについて解説します。

このシステムは、ディーゼル車の排出ガス中に含まれる有害な窒素酸化物(NOx)を無害な窒素と水に変えるもので、大気汚染や地球温暖化の防止に欠かせない技術です。

ディーゼル車でも環境規制をクリアできるのは、このシステムがあるからと言えるでしょう。

これから詳しく解説していきます。

 

 

尿素SCRシステムについて

DALL·E 2024-10-15 09.51.18 - Illustration of car emissions with environmental symbols such as earth and leaves, along with road safety signs and a car maintenance scene, informati

尿素SCRシステムとは、ディーゼルエンジンの排気ガス中から有害な窒素酸化物(NOx)を削減する装置です。

SCRは「Selective Catalytic Reduction(選択的触媒還元)」の略で、排気ガスに尿素水溶液を噴射し触媒を通じて化学反応を起こすことでNOxを無害な窒素と水に分解します。

このシステムは大型トラックやバスなどのディーゼル車に広く採用されており、排出するガスをクリーンにして環境保護へとつなげています。

 

触媒の役割と種類

Abstract metal vintage molecules medical background

触媒はNOxとアンモニアの化学反応を促進するために使用され、触媒の材質や設計によって還元効率が決まります。

触媒にはいくつかの種類がありますが、ディーゼル車や産業設備などでの排気ガス処理に重要な役割を果たすバナジウム触媒、ゼオライト触媒は、SCRとしてNOxの除去に使われています。

 

■バナジウム触媒

軽量で高いNOx還元効率を持ち、比較的低温でも効果的に作動しますが高温時の性能がやや低下することがあります。

 

■ゼオライト触媒

高温の環境でも安定して作動し、幅広い温度範囲でNOxを還元することができるため大型車や商用車で多く採用されています。

 

尿素SCRシステム導入の目的と仕組み

Mature mechanic standing in front of a cars diagram background while looking at camera

NOxは大気汚染や酸性雨の原因とされる有害物質で、多くの国が排出を厳しく規制しています。

このシステムはディーゼルエンジンから排出されるNOxを低減するために導入された環境対策装置で、環境負荷を減らしつつエンジンの効率を最適化させることで燃費の向上に貢献しています。

では、どのような仕組みなのか?

説明すると以下のようになります。

 

  • 尿素水溶液の噴射
    排気ガスが排気管を通過する際に尿素水溶液(アドブルーなど)が噴射され、排気ガスと混合します。排気ガスは高温なため反応し、尿素水溶液がアンモニア(NH₃)に分解されます。

  • SCR触媒での化学反応
    排気ガスとアンモニアの混合ガスがSCR触媒を通ります。これによりアンモニアとNOxが化学反応を起こし、無害な窒素(N₂)と水(H₂O)に変換されます。

  • クリーンな排気ガスの排出
    最終的にNOxが除去されたクリーンな排気ガスが大気中に排出、環境への負荷を最小のものにします。

 

このような流れでディーゼルエンジン車のNOx排出を90%以上削減する効果があり、環境保護や法規制への対応において重要な技術す。

 

尿素SCRシステムの異常

hand drawing blank flow chart on new modern computer as concept

システムは電子制御されているため異常が発生することがあります。

異常は主に尿素水の供給不足、センサーやポンプの故障、触媒の劣化などが原因で、尿素水が不足するとNOxの還元が正常に行われず、排出ガスが基準を超える可能性があります。

センサーやポンプの故障では尿素水の正確な噴射ができなくなり、システム全体の動作に支障が出ます。

また触媒の劣化や詰まりによって化学反応が不完全になる場合もあります。

 

〈異常のサイン〉

・警告灯の点灯:ダッシュボードに尿素SCR関連の警告灯が点灯する場合、システムに異常が発生している可能性があります。

・エンジンのパワー低下:尿素SCRシステムが正常に作動しない場合、エンジンがパワー制限モードに入ることがあります。

・排気ガスの色の変化:黒煙や青い煙が出る場合、システムに異常があると考えられます。

 

システムが正しく作動しないと排出ガス規制に違反するだけでなく、エンジンのパフォーマンスにも悪影響を与えます。

これらの異常を防ぐには定期的なメンテナンスが重要です。

 

尿素SCRシステムのメンテナンス

データ表示参考

・尿素水溶液の定期補充:適切な品質の尿素水溶液を定期的に補充し不足を防ぎます。

・センサーと噴射装置の点検:定期的にシステムの各センサーや噴射装置を点検します。

・触媒の状態を確認:詰まりや劣化がないかを確認し、必要なら清掃や交換をする。

 

〈異常が出た場合の対処〉

・スキャンツールによるエラーコードの確認:スキャンツールを使用してエラーコードを確認。異常箇所が特定できれば効率的に修理が行えます。

 

・尿素水溶液の交換:品質が悪い、不純物が多いといった場合は尿素水溶液を交換し、システムを再起動して正常に戻るか確認します。不足している場合は補充します。

・専門業者での点検と修理:異常が続いたり解決が難しい場合は、専門の業者に相談・依頼することも考慮します。

 

まとめ

尿素SCRシステムはディーゼルエンジンの排出ガスをクリーンに保ち、大気汚染の防止にも貢献するかけがえのない技術です。

環境保護はもちろん、システムの寿命を伸ばしエンジンのパフォーマンスも最適化できることから異常時には素早い対応が必要となり、スキャンツールを活用した診断や設定調整が推奨されています。

システムの理解と定期的なメンテナンスがとても重要です。

Similar posts