DPFとは?DPF再生・洗浄の重要性と警告灯の対処法
1. DPFとは?
DPF(Diesel Particulate Filter、ディーゼル微粒子捕集フィルター)は、
ディーゼルエンジン車に搭載される排出ガス対策装置の一つです。
ディーゼルエンジンから排出されるPM(Particulate Matter、粒子状物質)を捕集し、
大気への放出を抑える役割を果たしています。
これにより、PMの排出が規制される環境基準をクリアし、環境に優しい運転を実現します。
2. DPF再生とは?
DPFには、運転中にPMが溜まるため、
定期的にこれを燃焼(再生)して除去する必要があります。
このプロセスを「DPF再生」と呼びます。DPF再生には主に2つのタイプがあります。
自動再生:車両が走行中、エンジン制御システムが自動的にDPF内のPMを燃焼させる仕組みです。このプロセスは、エンジンの温度が一定以上になると開始され、エンジンの回転数や燃料噴射の調整を通じてPMを効率的に燃焼させます。このため、運転中にドライバーが特に意識する必要がなく、気づかないうちに行われるため、ドライバーの負担を軽減します。適切に機能している場合、車両の性能や燃費に影響を及ぼすことなく、DPF内のPMを定期的に除去し続けます。
強制再生:自動再生がうまく行われない場合や、DPF内にPMが過剰に溜まってしまった場合に行う手法です。この場合、メカニックが専用の機器を使用して、DPFを高温に加熱し、PMを強制的に燃焼させて除去します。特に短距離の走行が多い車両では、エンジンが自動再生を行うための条件を満たしにくく、PMの蓄積が進みやすいため、強制再生が必要になることが多いです。強制再生は、専門的な知識を持つ技術者によって安全に行われ、DPFの寿命を延ばし、エンジンの性能を維持するために重要な手段となります。
3. DPF警告灯が点灯する原因と対処法
DPF警告灯が点灯するのは、フィルター内にPMが溜まりすぎているサインです。
この状態を放置すると、エンジンの性能が低下し、
最悪の場合エンジンの損傷につながることがあります。
警告灯点灯の原因
- 短距離走行の繰り返しで自動再生が完了しない
- 長時間のアイドリングによるPMの蓄積
- 燃料品質の低さによるススの増加
警告灯が点灯した場合の対処法
長距離走行を試みる:ディーゼルエンジン車のDPF内に溜まったPMを効率的に燃焼させるために、時速60km以上で少なくとも30分間以上の連続走行を行うことが推奨されます。このプロセスによりエンジンが十分な温度に達し、自動再生機能が適切に作動して、PMを効率的に燃焼させることが可能です。特に長距離を走行することで、DPF内の微粒子が燃焼され、フィルターの詰まりを解消する手助けとなります。
強制再生を行う:長距離走行などの方法を試してもDPF警告灯が消えない場合には、整備工場に相談して強制再生を依頼することをお勧めします。強制再生は専門のメカニックが専用の機器を使ってDPFを高温に加熱し、溜まったPMを強制的に燃焼させて除去する作業です。この方法は特に、短距離の走行が多い車両や、頻繁にアイドリングを行う車両において有効で、DPFの性能を回復させ、エンジンの効率を維持するために重要です。
DPF洗浄を検討する:DPFが極端に詰まっている場合や、PM再生が難しい状態になっている場合、フィルターの洗浄が必要となることがあります。洗浄は、DPFを車両から取り外し、専用の洗浄液や機器を使用して、高圧で内部を洗浄するプロセスです。これにより、PMやススの蓄積を効果的に除去し、フィルターの性能を回復させ、エンジンのパフォーマンスを向上させることができます。また、定期的な洗浄によりDPFの寿命を延ばし、交換コストを削減することが可能です。
4. DPF洗浄の必要性と手順
DPFが詰まる原因は、PMの蓄積だけでなく、ススやオイル成分の蓄積も考えられます。
この場合、再生プロセスだけでは除去できないため、定期的な洗浄が必要です。
DPF洗浄の手順
DPFの取り外し:洗浄を行うための最初のステップは、車両からディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)を慎重に取り外すことです。この作業は、フィルターを傷つけないように注意深く行われる必要があり、専門的な知識を持った技術者によって行われることが推奨されます。取り外しの際には、フィルターと接続されているセンサーや配管を丁寧に外し、フィルターを傷つけないようにします。
高圧洗浄:取り外したDPFは、専用の洗浄液や機器を使用して、内側のフィルター部分を高圧で徹底的に洗浄します。このプロセスでは、DPF内部に蓄積されたPM(粒子状物質)やスス、オイル成分を効果的に除去することが目的です。高圧洗浄は、フィルターの目詰まりを防ぐために非常に重要であり、洗浄液の選択や洗浄圧力の調整は、フィルターの材質や状態に応じて慎重に行われます。
乾燥と再組み立て:洗浄が完了した後、フィルターを完全に乾燥させることが必要です。乾燥が不十分であると、フィルター内に残った水分が再び詰まりの原因となり、DPFの性能を低下させる可能性があります。完全に乾燥したことを確認した後、フィルターを元の位置に再組み立てます。この際も、取り外し時と同様に、フィルターと接続部品を適切に取り付け、漏れがないように確認します。再組み立てが完了すれば、DPFは元の性能を発揮し、エンジンの効率的な運転をサポートします。
DPF洗浄のメリット
- フィルターの寿命延長:定期的な洗浄により、DPFの寿命を延ばし、交換コストを抑えることができます。
- エンジンパフォーマンスの回復:DPFの詰まりを解消することで、エンジンのパワーが回復し、燃費も向上します。
5. DPFのメンテナンス頻度
DPFの再生や洗浄の頻度は、車両の使用状況に依存します。
以下は一般的な目安です:
- 定期的な再生:日常的な運転で時々エンジンを高回転にし、PMを燃焼させることが重要です。特に短距離走行が多い場合は、長距離走行を定期的に取り入れましょう。
- 洗浄のタイミング:DPFの洗浄は、通常3〜5万kmごとに行うのが理想です。ただし、エンジンの動作や燃費が悪化した場合は、早めに洗浄を検討しましょう。
6. DPF関連のトラブルシューティング
DPFの不調は、エンジンや車両全体の動作に直接影響します。
以下はよくあるトラブルとその対処法です。
エンジン出力の低下:エンジン出力の低下は、DPFが詰まっている可能性が考えられます。DPFが正常に機能していないと、エンジンが理想的な状態で運転できず、必要なパワーを発揮できなくなります。まずは、DPF再生を試みることが第一歩です。再生が成功すれば、DPF内のPMが燃焼され、詰まりが解消されることが期待できます。しかし、再生を試みたにもかかわらず、エンジン出力が回復しない場合は、DPFが深刻に詰まっている可能性があります。その場合、専門的な技術を用いてDPFを洗浄し、フィルターのクリーニングを行うことを考慮します。
燃費の悪化:DPFの状態が悪いと、エンジンの効率が著しく低下し、結果として燃費が悪化することがあります。燃費の悪化は、車両運転コストの増加に直結するため、早期に問題を解決することが重要です。まず、DPFの点検を行い、目詰まりや汚れの程度を確認します。その後、必要に応じてDPFの再生や洗浄を行い、エンジンの効率を回復させるためのメンテナンスを実施します。
頻繁な警告灯の点灯:DPF警告灯が頻繁に点灯する場合は、DPFの再生が正常に行われていない可能性があります。この問題を放置すると、エンジンやDPFのさらなる損傷を引き起こす恐れがあります。まずは、車両の取扱説明書に従い、長距離走行やエンジンの高回転を試みることで、DPFの自動再生を促進します。それでも警告灯が消えない場合は、整備工場で強制再生を依頼し、PMを強制的に燃焼させる措置を講じます。場合によっては、DPFが深刻に損傷している可能性があるため、フィルターの交換を検討することも重要です。これにより、エンジンとDPFの両方の性能を最適化し、車両の正常な運転を確保します。
※補足
G-SCANではデータモニタで車両に搭載されているセンサーの値を見ることができます。
もし、DPFのつまり具合が気になった場合は、
データモニタで値をチェックして参考値と比較することもできます。
(※車種・メーカーにより対応・非対応があります)
(例)G-SCANZ データモニタ デモ画面キャプチャー
7. DPFとエンジンの長寿命化
DPFは、エンジンの健康を保ち、排出ガス規制をクリアするための重要な装置です。
適切にメンテナンスすることで、エンジン寿命の延長や燃費向上が期待できます。
特に、環境に優しい運転を心がけるためにも、DPFの状態を定期的にチェックし、
問題があれば早めに対処することが重要です。
8. まとめ:DPFの重要性を理解し、適切なメンテナンスを
DPFとは、ディーゼルエンジン車のPM排出を抑制する重要なフィルターです。
DPFの適切な再生と洗浄により、エンジンの性能を維持し、
燃費改善や排気ガスのクリーン化を実現できます。
警告灯が点灯した場合は、放置せずに適切な対処を行い、車両の長寿命化を目指しましょう。