整備技術情報

DPF/DPR/DPD 排気温度と排気差圧、強制再生の仕組みと重要性

DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)の概要、役割、再生方法(自動再生・強制再生)および警告灯点灯時の対応について詳細に解説。適切なメンテナンスによりエンジン性能の維持と環境保護を実現します。


はじめに

 

今回はDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)に関するお話です。

メーカーによって呼び名が異なりますが今回はDPFで記載させていただきます。

DPF:三菱ふそう・日産・マツダ

DPR:トヨタ・日野

DPD:いすゞ

今回はDPFとは何か?その役割やメンテナンス方法などを解説します。

DPFはディーゼルエンジンの性能維持や寿命を延ばすだけでなく、

環境や健康にも関わってくることからも、定期的な整備はもちろん、

DPFに関する理解が重要です。

 

 

DPFとその働き

DALL·E 2024-10-15 09.51.18 - Illustration of car emissions with environmental symbols such as earth and leaves, along with road safety signs and a car maintenance scene, informati

DPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルター)とは、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる煤(すす)やカーボンといった微細な粒子を捕集するフィルターのことで、有害な粒子状物質(PM)の大気への放出を抑えます。

この働きによって排気のクリーン化が実現でき、環境保護にもつながることから環境規制の厳しい都市部では重要なものです。

またPMは人体にも悪影響を及ぼすため健康リスクも軽減できます。

DPFの状態は排気差圧の指標で確認できます。

DPFPMが溜まるとフィルターの抵抗が増加し、排気ガスがフィルターを通過する際の圧力差が大きくなります。

正常な状態なら排気差圧は低い値で、スムーズに排気ガスが通っていることを意味します。

つまりフィルターが詰まっておらず適切にメンテナンスされていることを示しています。

一方、値が高ければPMが蓄積されており、排気ガスの流れが妨げられていることが分かります。

この状態が長期間続けばさらにDPFが詰まり、エンジンのパフォーマンスに悪影響が出る可能性もあることから、定期的なチェックとメンテナンスが重要で、排気差圧の変化に注意する必要があります。

 

DPF/DPR/DPDの再生

Portrait of a smiling young mechanic next to background with car engine and heart line

DPFは効果的にPMを捕集する事ができますが、フィルター内に蓄積されるため一定の期間が過ぎるとフィルター性能が低下します。

これを防ぐためにはフィルター内に溜まったPMを高温で燃焼させて除去する再生が必要です。

この再生を定期的に行うことでフィルターの目詰まりを防ぎ、DPFの機能を保ちながらエンジンのパフォーマンスも維持させることができます。

再生は「自動再生」と「強制再生」があります。

 

自動再生

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自動再生は車両が走行中に排気温度が一定以上に上がった際、DPF内のPMを自動で燃焼させて取り除く仕組みです。

高速道路や長距離の運転などで排気温度が高まると、PMが燃焼されてフィルターの詰まりが防がれます。

これによってDPFは手間なくクリーンな状態が維持されエンジンの効率も保たれますが、短距離運転が主となる車両では、エンジンの負荷が少なく排気温度が十分に上がらないことがあります。

この際、DPF内のPMの燃焼が不完全で再生が適切に行われず、結果、DPFが詰まりやすくフィルターの効率も低下します。

このような車両には高速道路での定期的な長距離走行や、スキャンツールを使ってのDPFの詰まり具合や再生状況の確認などが推奨されています。

 

強制再生

Mechanic reparing car while consulting futuristic interface in blue

強制再生は、エンジン停止時や排気温度が十分に上がらない短距離走行が続きPMがたまって自動再生ができない場合に実施する再生方法です。

DPF警告灯の点灯やエンジンパワーの低下といった現象が見られた際、強制再生が必要になることがあります。

実施時はスキャンツールを使って車両のエンジン制御ユニット(ECU)に強制再生を実施するように指示を出し、排気温度を高めDPF内に蓄積されたPMを強制的に燃焼・除去します。

終了後、整備士は再びスキャンツールを使用して排気差圧が正常な範囲内に戻っているかを確認します。

排気差圧が低下していると再生が成功したことを意味し、フィルターが正常に機能していることが確認できます。

 

DPF警告灯の点灯

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車両メーターにあるDPF警告灯が点灯した際、DPFフィルターが詰まっている可能性が非常に高いといえます。

この警告灯はフィルター内に蓄積された粒子状物質(PM)が規定の限界を超えていることを示しており迅速な対応が求められます。

 

エンジンパワーの低下

Car mechanic fixing a broken engine at the garage

DPFの詰まりが深刻になるとエンジンのパワーが大きく低下します。

この状態ではエンジン本来のパフォーマンスが発揮できず、高速道路での追い越しや急な加速が必要な場面での運転に影響が出る可能性があり、燃費の悪化も考えられます。

このような状況を避けるためには、定期的なDPFのメンテナンスと、必要に応じた強制再生の実施が重要です。

エンジンの出力が低下していると感じたら、DPFの状態を確認し適切な対応を取ることが求められます。

 

DPFのメンテナンスと強制再生の予防

An image of a DPFDPRDPD system, showing exhaust temperature and pressure differentials, with a focus on the mechanism and importance of forced regener

DPFが詰まる原因は排気温度が十分に上がらずPMが燃焼しないことなので、DPFのメンテナンスではフィルターに溜まったPMの効率的な除去が重要です。

特に短距離運転が多い車両はPMが溜まりやすく、自動再生が不十分になることがあるため、定期的な強制再生や長距離走行での再生の実施が予防とエンジン性能の保持につながります。

DPFは排気ガスをクリーンにして環境保護や健康リスクの軽減につなげる装置でもあるため、トラブルが起こってからではなく未然に防ぐ対応を心掛けることが重要です。

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