ディーゼルエンジンのコモンレールシステムは、高圧燃料を最適なタイミングで正確に供給することで、高い燃焼効率と低排出ガスを実現しています。
その中核となる部品がサプライポンプです。
この部品が故障すると、エンジンの不調やエンジンが始動できないなどの不具合、燃費の悪化といった問題が起こります。
今回は、このサプライポンプの故障症状や原因、コモンレールシステムの基礎について解説します。
目次
サプライポンプとコモンレールシステムの関係性と役割
サプライポンプ故障の症状
サプライポンプの故障原因とその診断
G-SCANを使った診断
サプライポンプが故障した際の修理方法と予防策
まとめ
サプライポンプとコモンレールシステムの関係性と役割
サプライポンプはコモンレールシステムのディーゼルエンジンにおいて、高圧燃料を生成しコモンレール(ポンプからの高圧燃料を一時的に蓄えておく蓄圧室)に送り込む役割を担います。
高圧燃料を各インジェクターで正確なタイミングと量で供給することで、燃焼効率の向上と排出ガスの低減を実現しています。
システムが正常に機能することでエンジン性能が維持され、ディーゼルエンジン特有の高出力と低燃費を支える上で最も重要な部品の一つとなります。
サプライポンプの主な役割は以下の通りです。
・燃料の加圧
→ディーゼル燃料を高圧にし、エンジンの燃焼に適した状態にします
・燃料の供給
→高圧燃料をコモンレールに送ることで、インジェクターへの燃料供給を可能にします
・安定した圧力の維持
→エンジン負荷に応じた適切な圧力を生成・保持し、燃焼効率を最大化にします
サプライポンプが正常に動作しなくなるとエンジン性能が低下し、重大なトラブルに繋がる可能性があります。
サプライポンプ故障の症状
故障すると、車両以下の症状が現れることがあります。
・エンジンがかからない
→燃料の供給が不足し、始動が困難になる場合があります。特に寒い時期や長期間放置した際 に症状が出やすくなります
・エンジンの出力低下
→燃料圧力の不足で、加速不良や力不足を感じる症状が出ます
・燃費の悪化
→燃料供給が不安定になり燃料消費が増え、燃費が悪化することがあります
・エンジン警告灯の点灯
→ECUが異常を検知して警告灯が点灯することがあります。この場合スキャンツールでの故障診断が必要となります
これらの症状が出た場合は、早急な点検が必要です。
サプライポンプの故障原因とその診断
故障の主な原因には燃料の汚れや経年劣化、燃料不足やエアの混入などが考えられます。
また、長期間の使用や燃料内の異物がポンプ内部を傷つけ、摩耗や詰まりを引き起こすことで劣化が進み、ポンプが故障することもあります。
さらに、供給燃料の不足やエアが混入することでポンプに過負荷がかかり、故障につながることもあります。
診断方法としては、まずスキャンツールや燃圧計を使用して燃料圧力が基準値に達しているかを確認します。
もしエンジン警告灯が点灯している場合は、スキャンツールで故障コードを読み取り、異常箇所を推定することもできます。
原因を推定し適切な診断・点検を行うことで異常を発見し、適切な修理や交換を行うことができます。
G-SCANを使った診断
G-SCANは診断において重要な役割を果たします。
燃圧やエラーメッセージの確認に加え、エンジン警告灯が点灯した際には故障コードを読み取り、異常箇所を推定できます。
また燃料供給の状態やシステムの挙動をリアルタイムで監視し、サプライポンプの不具合を早期に発見することも可能です。
サプライポンプが故障した際の修理方法と予防策
修理方法
サプライポンプが故障した場合、必要に応じて燃料フィルターや配管を清掃、ポンプ自体を修理または交換します。
交換費用は車種や種類によって違います。
予防策
故障を防ぐポイントを下記にまとめました。
これらを意識することで、故障リスクを減らし、燃料システムの長寿命化が期待できます。
・高品質な燃料の使用
規格に準じた燃料を選ぶことで不純物によるリスクを軽減します
・燃料フィルターの定期交換
定期的にフィルターを交換することでポンプへの負担を減らします
・適切なメンテナンスの実施
定期点検の実施で、早期に異常の有無を確認します
まとめ
サプライポンプはコモンレールシステムの中核を担う重要な部品で、故障するとエンジン性能の低下や燃費の悪化を招き、最悪、エンジン停止といったリスクもあります。
万が一トラブルが発生した場合は、スキャンツールを活用して迅速に故障コードやデータ表示から原因を推定し、適切な点検・整備を行うことが重要です。
安全で快適な走行を続けるためにも、サプライポンプの状態の定期的な確認や、トラブルなどの際の早期の対応がとても重要です